よが あけました。
あさの ひかりを あびて、
竹やぶの 竹の はっぱが、
「さむかったね。」
「うん、さむかったね。」
と ささやいて います。
雪が まだ すこし のこって、
あたりは しんと して います。
どこかで、小さな こえが しました。
「よいしょ、よいしょ。おもたいな。」
竹やぶの そばの ふきのとうです。
雪の 下に あたまを 出して、雪を どけようと、
ふんばって いる ところです。
「よいしょ、よいしょ。そとが 見たいな。」
「ごめんね。」
と、雪が 言いました。
「わたしも、早く とけて
水に なり、とおくへ いって
あそびたいけど。」
と、上を 見上げます。
「竹やぶの かげに なって、
お日さまが あたらない。」
と ざんねんそうです。
「すまない。」
と、竹やぶが 言いました。
「わたしたちも、ゆれて おどりたい。
ゆれて おどれば、雪に 日が あたる。」
と、上を 見上げます。
「でも、はるかぜが まだ こない。
はるかぜが こないと、おどれない。」
と ざんねんそうです。
空の 上で、お日さまが わらいました。
「おや、はるかぜが ねぼうして いるな。
竹やぶも 雪も ふきのとうも、みんな
こまって いるな。」
そこで、南を むいて 言いました。
「おうい、はるかぜ。おきなさい。」
お日さまに おこされて、
はるかぜは、大きな あくび。
それから、せのびして 言いました。
「や、お日さま。や、みんな。おまちどお。」
はるかぜは、むね いっぱいに いきを すい、
ふうっと いきを はきました。
はるかぜに ふかれて、
竹やぶが、ゆれる ゆれる、おどる。
雪が、とける とける、水に なる。
ふきのとうが、ふんばる、せが のびる。
ふかれて、
ゆれて、
とけて、
ふんばって、
もっこり。
ふきのとうが、かおを
出しました。
「こんにちは。」
もう、
すっかり はるです。
*光村図書「こくご 二上 たんぽぽ」/平成25年2月5日発行 より抜粋